2013年1月15日火曜日

仔グマのクライミング


                       仔グマのクライミング

 

 

崖で子育てをするクマ(回顧録)

6月の初旬、5月の終わりに初めて撮影することができた親仔のツキノワグマを追っていた。仕事の都合があり、山に入るのが一週間以上空いてしまった。再び撮影したいという想い一心で山肌をくまなく見て回るが見つけることができない。この広いフィールドで同じクマに巡り合えるのはきっと奇跡的なことなんだろう・・と、半分諦めかけていた。

日が少し陰り始めた頃、山肌に黒い点を見つけた。なぜか直感で“あの親仔だ!”と思った。双眼鏡で覗いてみると、クマは崖の中腹で静かに佇んでいた。母熊は、子殺しをする雄熊を嫌って、急峻な崖で子育てをするという。見通しの良い崖であれば、天敵の存在に気づきやすいからだという。聞いていた嘘のような話が目の前に起こっている。崖で子育てをするクマが本当にいるなんて・・。この日は、一日中親仔を探し回っていて、クマのいる崖の対面を僕は何度も通り過ぎていた。僕に気づかれず、ずっとそこにクマがいたことが、なんだか面白かった。

しばらく観察をしていたのだけれど、母熊は一向に動かない。今日はここで一晩過ごすのかと思った矢先、母熊が突然崖を登り始めた。その時の様子はこちら

心もとない足取りだけど、ゆっくり、ゆっくり、着実に崖をよじ登っていく仔グマの姿に、可愛さはもとい、彼らの持つ野生の力強さ、深遠さに心惹かれてしまった。やはり、こんなシーンに巡り合えたのはちょっと不思議なことだと思った。

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